Amazonが Mechanical Turk というクラウドソーシングサービスを提供していることはよく知られている。 米国に銀行口座を持っていないと仕事を依頼できないため、 実際に利用したことがある人は少ないかもしれないが、 手軽にいろんな仕事を依頼したり請け負ったりできるということは画期的なことだろう。
手軽に利用できるクラウドソーシングサービスをユーザインタフェースに利用しようという試みが米国では最近流行しているようである。 ユーザテストに利用するというのが最も手軽な例であろうが、 計算機と同じような機能をネット上の誰かに依頼してしまうという試みも盛んである。 たとえばMITで開発された Soylent というシステムでは Wordの編集メニューに「段落を短くまとめる」のような項目が追加されており、 ユーザがこれを選択すると Turkit というライブラリを利用してMechanical Turkへの発注が自動的に行なわれ、 世界の誰かが段落を短くまとめてくれるようになっている。 クラウドソーシングを活用するという研究や論文はここ数年かなり増えており、 最近のユーザインタフェース系の学会では必ずクラウドソーシングのセッションがある。
計算機に対する指示とクラウドソーシングの発注が同じレベルで実行できるというのは実に面白いが、 世界の誰かを安い金でコキ使っている印象があるのも確かである。 Mechanical Turkの仕事を請けることは誰でもできるので実際にやってみたことがあるのだが、 日本に関連した文章の説明が適切かどうかを英語で答えるという結構大変な仕事をみっちり1時間作業した結果、 報酬$1.80をいただくことができた。 先進国の人間でこんな給料で仕事をする人はいないだろうから、 Soylentのような仕事を請け負うのは発展途上国の人間しかいないだろう。 こういうシステムを作ったり使ったりすることには疑問を感じる。
とはいうものの、 日本語が得意でかつ激安の給料で働いてくれる人間が大量にいるような国が世界のどこかに存在したとすれば、 そういう人達にいろんな雑用を発注したくなるだろう。 英語が得意でかつ激安の給料で働いてくれる人間は世界に大量に存在するだろうから、 アメリカ人にとってはそういう人々をクラウドソーシングという名目で搾取することが気にならないのかもしれない。
コメント
コメント一覧 (4)
グラフィックデザインの業界などは、多くの思考時間と制作の手間ひま、ある程度の完成度に熟練するまでの多くの自己投資などを経て、職業化していたものが、主婦のパートや学生のアルバイトのように時間的余裕のありすぎるよかの埋め合わせのような業態と化してしまい。
職業としては成り立たなくなりつつあります。
ボランティアの進出セオリーとして、既存に職業として成り立っている場所や業界に立ち入ってはならないとあるのですが、このクラウドソーシングは微々たるも料金が支払われているのでたちが悪い。
この問題は、グラフィツクデザインの業界以外にも必ず飛び火をして、経済の基盤を不安定にするのではと、懸念するものであります。
アイデアは面白いものなのですから誰もが得する形になれば良いのですが...
もちろん筆者はそういった商品は使用されないと思いますが、ほぼ全ての日本人はその恩恵に預かっています。